血管外科
血管外科の新たな一歩:受け継がれてきた技術と最先端の医療で未来へ進みます。
食生活を含めた生活様式の欧米化、高齢者人口の増加により、動脈硬化を原因とした循環器系の急増する疾患に対応しています。特に、下肢の虚血を来す疾患(閉塞性動脈硬化症)に注目が集まっており、早期の介入により下肢の予後だけでなく、生命予後の改善も期待できることが強調されています。2015年4月より血管病の患者さんに対して、高度な専門的医療を提供できるよう、血管外科が独立しました。最新のハイブリッド手術室を備え、カテーテル治療とバイパス手術を組み合わせた低侵襲で信頼性の高い治療を提供します。また、全身性の動脈硬化疾患の早期発見と治療、包括的な管理にも着目し、他科との連携により迅速な治療の実現を目指しています。
主な対象疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 閉塞性動脈硬化症
- 腹部大動脈瘤
- 下肢静脈瘤
- 透析シャント
閉塞性動脈硬化症
動脈硬化が原因で、下肢の動脈が狭くなったり詰まったりした結果、痛みを来す病気で、下肢の慢性的虚血性疾患の90%以上を占めます。治療には、生活様式の改善や薬物、運動療法等の内科的治療、血管内カテーテル治療やバイパス手術等の血行再建術があります。血管造影のできるハイブリッド手術室を完備し、カテーテル治療とバイパス手術を組み合わせた低侵襲かつ信頼性の高い治療が可能となっています。
近年、糖尿病や透析を必要とする腎不全の合併症例が増加しており、重症の足潰瘍、足壊死が著増しています。重症症例の自然予後は非常に悪く、無治療では50%以上が1年以内に下肢か命を失うといわれ、早期の血行再建術が必要となります。カテーテル治療やバイパス手術など最適な治療を速やかに行うことによって、下肢切断を回避することを目標としています。
急性動脈閉塞
急性動脈閉塞は、ある日突然、四肢の動脈や内臓動脈が詰まり急激な痛みを伴う病気です。肢切断に至る可能性があり、迅速な診断と適切な治療を行わなければ、肢のみならず生命予後も不良となる疾患です。心臓や脳血管疾患を合併することが多く、約20%という高い死亡率が報告されています。
病因は不整脈に伴う心臓由来の塞栓症や動脈硬化や動脈瘤など血管由来の血栓症が多いですが、交通外傷に合併する急性動脈閉塞やカテーテル治療に伴う医原性の急性動脈閉塞も散見されます。
治療は、一般的には緊急手術が必要であり、動脈を切開し、血栓塞栓除去を行います。2023年からは動脈切開を必要としない、カテーテルによる血栓吸引治療を導入し、局所麻酔下での手術も可能となっています。血栓塞栓除去や吸引が困難な症例では、バイパス手術が必要になる場合もあります。
腹部大動脈瘤
動脈瘤とは “動脈にできたこぶ”です。進行すれば風船と同じく、破裂します。全身のあらゆる動脈にできますが、頭蓋内を除けば、腹部大動脈にできる頻度が最も高いとされています。動脈瘤の原因はいくつか指摘されていますが、最も多いのは老化による“変性”です。
動脈瘤は自然に退縮することはありません。有効な薬物治療はなく、根治治療は手術です。
手術適応は、動脈瘤の形と大きさによって決定されます。手術方法は開腹して人工血管で置き換える方法と、カテーテル法でステントグラフトを挿入する方法があります。動脈瘤の形や動脈の性状、全身状態、年齢、患者さんの希望により適応が決められます。
下肢静脈瘤
脚の静脈が“こぶ”になったもので、最も多い病気の一つです。美容的に問題はありますが、日常生活に不自由がなければ必ずしも外科治療の対象にはなりません。基本は弾性ストッキングの着用による症状の軽減ですが、それで不十分な場合、手術治療の対象となります。
治療には、硬化療法、伏在静脈抜去術(ストリッピング術)、伏在静脈焼灼術(レーザー治療、ラジオ波治療)、伏在静脈塞栓術(グルー治療)があります。根治のためには、原因となる伏在静脈の治療が必須です。以前は伏在静脈抜去術が行われていましたが、2011年にレーザー治療が認可されて以来、伏在静脈焼灼術が主流を占めるようになってきました。2021年からは伏在静脈塞栓術(グルー治療)を導入しています。全ての静脈瘤に伏在静脈焼灼術、塞栓術が有効なわけではなく、エコー検査での評価が必要です。
当院では安全のために、術後一泊入院を原則としますが、希望により日帰り治療もできる体制をとっていきたいと思います。
透析シャント
慢性腎不全に対する血液透析治療を円滑に維持していくためには、シャントと呼ばれる、血液を体外に出し入れするための血管(バスキュラーアクセス)が重要です。
シャントには、自家血管による動静脈吻合や人工血管を用いた動静脈グラフトがあります。シャント血管やグラフトは狭窄や閉塞をきたし易く、透析血流量の低下を認めた場合には、バルーンカテーテルを用いた狭窄血管の拡張(シャントPTA)などの治療が必要になります。シャント血管の瘤化や感染を認めた場合には、外科的修復術が必要になります。またシャント血流の過剰によるシャント肢腫脹や末梢手指の虚血(スティール症候群)なども治療対象となります。
バスキュラーアクセスのトラブルは、透析患者さんが安心して、速やかに治療を受けられるように、腎センターと連携体制を整えています。
医師紹介
古森 公浩
役職 | 院長 |
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専門分野 | 血管外科全般 |
認定・資格など | 日本血管外科学会名誉会長 日本脈管学会理事長 日本外科学会名誉会員 日本心臓血管学会名誉会員 日本外科学会専門医/指導医 日本脈管学会認定脈管専門医 三学会構成心臓血管外科専門医認定機構専門医/修錬指導医 日本血管外科学会血管内治療認定医 腹部ステントグラフト実施医/指導医 胸部ステントグラフト実施医/指導医 |
三井 信介
役職 | 副院長 |
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専門分野 | 血管外科全般 |
認定・資格など | 日本血管外科学会理事 日本心臓血管外科学会評議員 日本静脈学会評議員 日本脈管学会評議員 日本外科学会専門医/指導医 日本脈管学会認定脈管専門医 三学会構成心臓血管外科学会専門医認定機構専門医/修練指導医 日本血管外科学会血管内治療認定医 腹部ステントグラフト実施医/指導医 下肢静脈に対する血管内治療の実施医/指導医 |
郡谷 篤史
役職 | 血管外科主任部長 |
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専門分野 | 血管外科全般 |
認定・資格など | 日本血管外科学会評議員 日本外科学会専門医/指導医 日本脈管学会専門医 三学会構成心臓血管外科学会専門医認定機構専門医/修錬指導医 日本血管外科学会認定血管内治療医 腹部ステントグラフト実施医/指導医 胸部ステントグラフト実施医 下肢静脈瘤に対する血管内治療の実施医/指導医 浅大腿動脈ステントグラフト実施医 |
中山 謙
役職 | 血管外科医長 |
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専門分野 | 血管外科全般 |
認定・資格など | 日本心臓血管外科学会専門医 日本外科学会外科専門医 腹部ステントグラフト実施医/指導医 日本脈管学会脈管専門医 |